2010年01月18日

幹事リレーコラム 第2回

第2回 「今こそ持続可能な社会実現に向けた、戦略的で実践的な方向性を示すとき」
京のアジェンダ21フォーラム 幹事長 小幡範雄
(立命館大学政策科学部 教授)

京都市の中長期目標では2030年までに90年比40%削減、2050年までに60%削減を掲げている。このような目標達成のシナリオはバックキャスティングで描くことが大きな意味を持つことは、第1回のコラムに内藤代表が書かれている。また削減対策もあらゆる分野にまたがって提案されている。
京のアジェンダ21−環境と共生する持続型社会への行動計画(1997年10月)を作成する段階でも40〜50%削減が必要である、実行力のあるパートナーシップづくり、まち全体がエコシティになるような提案など多くの議論を重ね、時には激論もしながら取りまとめを、極めて短期間で実施したことが思い出される。これが出発点である。この出発点からもう一度、脱温暖化の実行を伴う計画・プログラムを作成することも大切になる。

COP15では、温室効果ガスの排出量の削減目標などをめぐって、発展途上国と先進国の対立も解けず、十分な政治的合意が得られないまま閉幕した。果たして、地球環境に対するリスクは、温暖化だけであろうか。現在、提案されている持続可能性指標で現状を見ていき、今後の活動の方向性を考えてみたい。


【図1:インプット・アウトプットモデル】

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都市活動や国家、地球での活動は、図1に示すインプット−アウトプットモデルで説明できる。インプットは資源・エネルギーの投入であるが、2005年〜2020年の間に原油の需要が供給を上回るというピークオイル問題の発生が言われている。日本から見れば、資源のない国であり、多くの原油を輸入に頼り、食料自給率は40%(1965年は73%)である。耕作放棄農地の面積は増え続けている。農産物の輸入に伴う見かけの水の輸入量はバーチャルウォーターと呼ばれ640億㎥/年であり、日本国内の年間灌漑用水使用量590億㎥/年より多いものとなっている。また、フード・マイレージ(「食料の (=food) 輸送距離 (=mileage) 」という意味。重量×距離(たとえばトン・キロメートル)であらわす)でみれば、食品の生産地と消費地が近ければフード・マイレージは小さくなり、遠くから食料を運んでくると大きくなる。2001年農林水産省の試算によると、日本の自給率の低さが原因となって、日本のフード・マイレージは、図2に示すように総量では世界中で群を抜いて大きく、国民一人当たりでも一位となっている。


【図2:各国のフード・マイレージ】
出典:農林水産省資料  ※単位:トン×キロメートル

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エコロジカル・フットプリント(EFと略す)とは、人間経済活動による資源再生・廃棄物浄化サービスに対する需要量に着目し、その需要量を生態系が持続的に満たすと仮定した場合、必要とされる生態系面積の合計であり、gha(グローバル・ヘクタール)という面積換算で表す。人類のEFの世界総計は、1980年代後半から、地球の限界(世界生物生産力)を超え、年毎に増え続けている。

図3に示すように、1人当たりのFEを国別に見れば、アメリカは9.4ghaで、全世界の人がアメリカ人のような生活をすると、地球は4.5個必要になる。日本は2.3ghaで、同様に、地球が2.3 個必要になる。中国は2.1ghaで、現在の地球の持っている生産力水準と一致しており、中国のような暮らしであれば全世界の人が暮らせることになる。しかし、大半の国々は全世界の平均値を下回っており、貧しい生活をしていることなる。

もう既に、地球資源は限界に近づきつつある。求められる脱温暖化、低炭素社会は私たちにどんな暮らしをしたいのか、あるいはするべきなのかという大きな選択を迫っているのである。インプット側の資源投入を減少させ、アウトプット側の二酸化炭素の減少ということを考えれば太陽光発電などの自然エネルギーの活用が最も有効であろう。そして、まち全体のエネルギー消費も減少させる必要がある。どこまでならインプットとアウトプットの量が削減でき、かつ楽しく暮らすことができるかも合意を図っていかなければならないだろう。

削減メニューは内藤代表が示したように非常に数多くある。これらのメニューだけを示して何でも良いですから市民生活で減らしてくださいと言うのはいささか無責任である。ビジョンないし目標を示さなければ、行動選択はなかなか起こらないように思われる。

例えば、スローライフなまち・京都のような目標を掲げ、経済成長を絶対的な目標としなくても十分な豊かさが達成されていく「定常型社会」が可能なのかを議論し、環境関連団体や市民、事業者、行政の集まりである、まさに対等な関係で結ばれたアジェンダフォーラムが知的で戦略的な方向性を示すときがきていると思う。

【図3:各国のエコロジカル・フットプリントから見た必要な地球の数】
出典:LIVING PLANET REPORT 2008 より作成
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